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建築ダイアグラムとは?有名設計事務所の事例でわかる建築図解の基礎知識

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建築学科に入学してしばらくすると、「ダイアグラム」という聴き慣れない単語を耳にすることがあります。

ダイアグラムとはなんなのでしょうか?

 

この記事では、建築課題を学び始める学生を対象に、ダイアグラムのデザイン事例や必要スキルを紹介しつつ、建築を学ぶ上でダイアグラムが果たす役割や重要性について紹介したいと思います。

 

建築における、ダイアグラムとは?

 

ダイアグラム(diagram)とは、直訳すれば図版・図表という意味の単語です。

 

特に建築学科では、

  • 建築のプレゼンテーションに使われる
  • 厳密性や正確性より、分かりやすさを重視した
  • 図面・パースを除く、あらゆる建築の解説図

をひっくるめて漠然と「ダイアグラム」と呼ぶことが多いでしょう。

 

以前当サイトではこのように表現しました。

 ダイアグラムとは、情報を整理し図版したものを意味する単語です。

建物がどのような敷地にあるのかを示す地図や、その土地の人口・気候を示すグラフなどの一般的な図版だけでなく、空間の魅力を解説するために単純化された平面図は断面図など、その内容は多岐にわたります。

 

www.gakka-gokko.com

 

要するにダイアグラムという単語は、正直みんな定義もよくわからないまま「なんとなく」使っている、非常にあやふやな単語なのです。

 

そのため、「ダイアグラムってなに?」という質問に対しては、ダイアグラムの事例をたくさんならべて、その意味をなんとなく把握してもらうのが一番わかりやすい理解の方法だと思います。



そこでこの記事では、まず有名な建築関係のダイアグラムを紹介したいと思います。

 

ダイアグラム事例紹介

 

1.nendoの建築ダイアグラム

 

まずダイアグラムの意味を理解するうえで、下記の動画をご覧ください。

 

これは、いま日本で最も人気の高いデザイン事務所nendoが設計・監修をした商業施設「KASHIYAMA DAIKANYAMA」の紹介動画です。



この動画を見れば、大人から子供までだれでも、

 

  • 複数の小さなハコを重ね合わせながら集合させた、「小さな丘」のような建物
  • ハコ同士が「重なった」場所を「重なった」素材で仕上げる
  • 屋外に使われている手すりと全く同じ寸法の部材を使い、家具や照明器具などをデザイン
  • 「家具」「インテリア」「建築」という、3つのスケールの異なる要素が柔らかく融合した空間体験

 

といったこの建築のコンセプトを、数分で理解できることかと思います。




一方、同じ内容を文章で説明したのが、下記の紹介文です。

 

建築デザインは、できるだけ代官山の街並みに馴染むように、ひとつの大きなハコとしてではなく、複数の小さなハコを重ね合わせながら集合させた、まるで「小さな丘」のような建物に。これにより、ハコとハコの隙間から不意に自然光が入ってきたり、視線が抜けて広がりを感じさせるなど、変化に富んだ内部空間が生まれた。また、エントランスとカフェスペースを半地下に配置することで、通りに立つと、上から俯瞰するように内部の様子や気配を感じることができる。それぞれのハコの屋上は見晴らしの良いデッキテラスになっており、それぞれが階段でつながっているため、自由に建物の外を歩きながら自然と上階に昇っていくことができる。このようにして、できるだけ建築物としての威圧感や、心理的な入りにくさを軽減することに配慮した設計となった。

 

インテリアは、この建物が持つ空間的な特徴を強調することを考え、ハコ同士が「重なった」場所を「重なった」素材で仕上げることに。B1Fの床は、通常の場所はそれぞれ異なる種類の玉砂利を使い分けているものの、ハコが重なった空間にはそれらの玉砂利をひとつに混ぜ合わせて使用。1Fはヘリンボーン調のフローリングとテラゾーを重ね合わせ、2Fはセメントにファブリックのテクスチャーを押し付けて転写。3Fは大理石に別の種類の石の柄をプリントしたり、ガラスに大理石の柄をプリントした。4Fと5Fも同様に、石材をフローリングと組み合わせた表現を用いた。

 

さらに外部のデザイン要素を内部に取り込みたいと考えた結果、デッキや外壁を積極的にインテリアに使用することに。また、屋外に使われている手すりと全く同じ寸法の部材を使い、家具や照明器具などをデザインしていった。 さらに、家具はできるだけインテリアに使用しているのと同じ素材を使い、「重なり」を生かしたディテールを心がけることで、「家具」「インテリア」「建築」という、3つのスケールの異なる要素が柔らかく融合した空間体験となることを目指した。

 

www.nendo.jp

 

 

動画と文章、両媒体が伝える情報は、ほぼ同じ内容です。

しかし、「老若男女すべての人がそのコンセプトを一発で理解できるか」という視点でみれば、文章による建築の解説よりもイラストレーションを用いての解説の方が、圧倒的にわかりやすいのではないでしょうか?

 

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「KASHIYAMA DAIKANYAMA」のダイアグラム(出典:http://www.nendo.jp



 

このように、ある建築の設計意図を誰かに紹介する上で、建築物の構造や機能や特徴を図解することは、非常に重要な意味を持っています。

 

図面や建築パースや模型写真や言葉では伝わりにくい、

 

  • 周辺環境の分析
  • 利用者層のイメージ
  • 基本的なゾーニングプラン
  • 基本的な動線計画
  • 設計コンセプト
  • 保守・運用計画
  • 構造・環境上の配慮

 

などをわかりやすく伝えるためには、イラスト・地図・グラフが欠かせない、そうした図版をひっくるめて、ダイアグラムと呼んでいるのです。



2.BIGのダイアグラム

ダイアグラムが有名な設計事務所としては、デンマークにある先進気鋭の設計事務所「BIG」が挙げられます。

 

BIGのオフィシャルサイトにアクセスすれば、BIGが設計した建築の一覧と、その設計コンセプトとなったアイデア、そしてそのアイデアをどのようにして発展させ、設計として磨き上げてきたのか、といったプロセスが、すべて公開されています。

 

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BIG 公式ページ

big.dk



 

それぞれのプロジェクトのページをクリックすると、

  • その設計のもとになったシンプルなアイデア
  • 実際にできた建築作品の写真(もしくはCG)
  • その設計に至るプロセスの解説ダイアグラム

などを見ることができます。

 

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PONT DE BONDY METRO STATION(出典:https://big.dk/#projects-pdb

PONT DE BONDY METRO STATION

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BIG PIN(出典:https://big.dk/#projects-pho

BIG PIN

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THE HEIGHTS BUILDING(出典:https://big.dk/#projects-wils

THE HEIGHTS BUILDING

 

コンセプチュアルで明快なダイアグラムと、それに素直に則ったダイナミックな建築。

純真な子供が考えたようなワクワクする建築を目指す方には、うってつけのお手本となるサイトでしょう。

 

3. OMAのダイアグラム

BIGに並ぶ、先進気鋭の建築事務所OMAもまた、多数のダイアグラムを公式サイトにて公開しています。

前述のBIGが、「その形がどのように生まれたのか?」という手順をSTEP BY STEPで紹介してくれるようなダイアグラムが多いのに対し、

こちらのOMAのダイアグラムはより多様性に富んでいる印象です。

 

以下、代表例を見てみましょう。

 

 

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Pierre Lassonde Pavilion(出典:https://oma.eu

ある建物のどこにどのような機能があるかを示すゾーニングの図

 

oma.eu

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CCTV – Media Park(出典:https://oma.eu

建物内の各エリアにアクセスする動線を示した図

oma.eu

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Ningbo Masterplan(出典:https://oma.eu

敷地周辺の環境を現した分析図

oma.eu

 

 

検索の際は、グーグル画像検索のサイト指定検索をつかうと、簡単に探すことができます。

 

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www.google.com

 

 

ダイアグラムを作る意味

このように建築家には、

 

  • 施工業者や同業者に、建築の情報を厳密に情報を伝えるための「正確な製図能力」
  • 施主や出資者に、建築の魅力や機能を伝えるための「わかりやすい図解能力」

 

という、建築を図解する二つの技術が必要なのです。



そしてダイアグラムとは、この後者の「建築をわかりやすく表現した図解」の事を意味するのです。

 

建築学科に入学したばかりの頃は、まだ製図の基礎的な技法や平凡な設計を破綻なくまとめる力を身につけるだけで精一杯かもしれません。

しかし将来、より複雑で高度な設計をこなすようになった際は、ダイアグラムを活かしたプレゼンテーションも重要になってくるかと思います。

 

ダイアグラムを作るためのソフト

では、こうした図版を作れるようになるためには、どのようなソフトが必要なのでしょうか?

代表的なのは、下記のソフトです。

  • Illustrator
  • Photoshop
  • モデリングソフト(3DCAD・BIMなど)

これらの学び方については、下記の記事に詳しくまとめてありますので、興味のある方はこちらの記事も御覧ください。

 

www.gakka-gokko.com