建築学科ごっこ

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【手描きパース】平面パースの奥行きを断面図から算出する方法

この記事は前回執筆した「【手描きスケッチ】平面パースの天井高ってどうやって決めるの? - 建築学科ごっこ」の補足として作成された記事です。

初見の方はまず以下の2記事を読了後、本記事を御覧ください。

 

www.gakka-gokko.com

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ここでは、平面図と断面図から平面パースの奥行きを作図する方法を紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

1そもそもパースとは?

パースとは3次元空間を2次元上に表現する手法の一種です。

中でもパースで用いられている線遠近法は、「遠くのものは小さく見える」という特徴を活かした表現手法であり、特に建築のように並行・垂直な直線が多く、遠近感を強調したい空間を表現するのに向いてる手法です。

 

1525年に出版された画家アルプレヒト・デューラーは「測定法教則」にて、線遠近法を「窓ガラスを通して見える外の風景をそのまま窓ガラスに映す取ること」と表現しています。

 

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[図1-1] 線遠近法の考え方を表した図



(画像はWikipediaより)

 

しかし、この手法は現実の建築を写し取ることはできても、建築学科のようにまだこの世に存在しない風景を想像上で描く場合には工夫が必要です。

そこで、「窓ガラスをとおして風景を映す」という発想をいかして、平面図や断面図の補助線を元に、架空の風景を幾何的・数学的に描く方法が開発されました。

  

2.線遠近法の考え方

まずはガラス越しに地平面上に置かれたりんごを映すことをイメージしてみましょう。

 

図2-1 パースを絵描くガラス窓の断面図と立面図

図2-1 パースを絵描くガラス窓の断面図と立面図



 

図の左は観測者の視点Sと置かれたガラス窓の関係を描いた断面図です。

一方右の図は観測者の視点から見える、ガラスに映る像を描いたものです。

この窓ガラス内が、あなたがこれから描きたい絵を描くキャンバスという事です。

 

左の図と右の図は高さを揃えてあるので、ガラス窓の高さやアイレベルの位置(左図の視点の高さと右図の地平線の高さ)は揃えてあります。

 

 

図2-2 断面図の「ガラス窓」と立面図の「ガラス窓」は高さが揃っている

図2-2 断面図の「ガラス窓」と立面図の「ガラス窓」は高さが揃っている



 

図2-3 断面図の「視点S」と立面図の「地平線」は高さが揃っている

図2-3 断面図の「視点S」と立面図の「地平線」は高さが揃っている



 

 

さて、ガラスの向こうにりんごを置いてみましょう。

 

図2-4 りんごを置く

図2-4 りんごを置く



 

このときガラスに映るりんごの大きさはどのように映るでしょう?

 

 

 

 

 

それは、断面図と立面図を連携させて導き出すことができます。

1.「視点S」と「対象物上の点A」を結んだ「補助線SA」を引きます。[図2-5]

2.「補助線線SA」と「ガラス面」が交わる点A’を求めます。[図2-6]

3.断面図上のA’の高さがそのまま立面図上の点A’の高さになります。[図2-7]

 

1.「視点S」と「対象物上の点A」を結んだ「補助線SA」を引きます。[図2-5]

1.「視点S」と「対象物上の点A」を結んだ「補助線SA」を引きます。[図2-5]

2.「補助線線SA」と「ガラス面」が交わる点A’を求めます。[図2-6]

2.「補助線線SA」と「ガラス面」が交わる点A’を求めます。[図2-6]

3.断面図上のA’の高さがそのまま立面図上の点A’の高さになります。[図2-7]

3.断面図上のA’の高さがそのまま立面図上の点A’の高さになります。[図2-7]








ここではりんご上の点Aと点Bしか取り上げていませんが、実際に描くときにはもっと多くの点の高さを図ることも有るでしょう。

 

このように、パースをある程度厳密に描く時は、その真横や真上に平面図や立面図を描き、補助線を引きながら作図するのが一般的です。

 

 

[図2-8]



 

3.平面図と断面図をもとに平面パースを描く方法

それでは、いよいよ平面図と断面図から平面パースを描く方法を紹介したいと思います。

平面パースは上から建物をみて描いたものです。

そのため、パースを描く時は図3-1のように平面図の上に断面図を配置して描きます。

 

 

[図3-1] 平面パースを断面図と平面図から作図

[図3-1] 平面パースを断面図と平面図から作図

 

 

STEP1平面図と断面図を同縮尺で縦に並べて描く

まずは下準備として、断面図と平面図を用意します。

同縮尺の2図面を、両端を揃えて縦に並べて配置しましょう。

 

[図3-2] 断面図と平面図を縦に並べる

[図3-2] 断面図と平面図を縦に並べる

 

 

平面図と断面図の距離はほどほどの距離が取れていれば特に気にしなくても大丈夫です。

 

また、今回は断面図にて、窓ガラスと建物の断面をピタリと一致させるように窓ガラスを配置しています。

これは、平面図と断面図の縮尺を一致させるために必ず必要な工程です。

もし、窓ガラスを建物から少し離れた位置に置くと、作図手順が非常に煩雑になるため、必ず窓ガラス面と建物の断面は一致させてください。

 

 

[図3-3] 窓ガラスは断面と一致させる

[図3-3] 窓ガラスは断面と一致させる



 

 

STEP2平面図に消失点を、断面図に視点を設定する

まずは消失点を設定しましょう。

これは以前の記事でも書いた通り、平面図中の任意の位置に設置すればいいと思います。

より効果的なパースにするために、中心的な部屋に消失点を置くのが好ましいでしょう。

 

そのうえで、図面内の各点から消失点に向かって放射状に消失線を引きます。

[図3-4]消失点を決め、消失線を引く

[図3-4]消失点を決め、消失線を引く



 STEP3視点を定める

次に、平面図内に取った消失点を通る垂直な補助線を断面図まで引きます。

この補助線は、すなわちガラス越しに建築を眺めるあなたの視線です。

そして、この補助線の上にあなたの視点Sを配置します。

 

[図3-5]

[図3-5]



 

 

補助線上のどこに視点を置くかは難しいところです。

仮に建物そのものと視点の距離をxとすると、xの大小によりパースの見え方はかなり変わってくるからです。

 

xが小さく視点が近いほど、パースがきつくかかり、最終的にできるパースの床が小さく描かれることになります。

xが大きく建物から離れるほど、パースが弱まり、より平面図に近い客観的なパースになります。

 

このあとSTEP4にて、視点と建物を結ぶ線をたくさん引くことになりますが、この線が形成する角度が45~60度に収まる位置に置くと良いとされています。(あくまで目安)

 

[図3-6]視点の位置を設定する

[図3-6]視点の位置を設定する



以上で作図準備は完了です。

 

 

さて、いよいよ本題の床の高さ、パースの奥行きの決定方法です。

床と壁の境目となる線(下図の赤線)はどのようにして引く場所を決定すればいいのでしょうか?

 

[図3-7]床の線(赤い線)の位置は何で決まる?

[図3-7]床の線(赤い線)の位置は何で決まる?



 

STEP4にてそれを決定します。

 

 

 

 

STEP4断面図から補助線を引き、床を描く

2節にて紹介したりんごのように、断面図内の視点と建物を結ぶ線とガラス面の交点から床の位置を求めましょう。

 

まずは視点Sと、断面図の床と壁の境目(A,B,C)を結ぶ補助線を引きましょう。

この線とガラス面の交点を点A’,B’,C’とします。

 

[図4-1]

[図4-1]



 

各点A’,B’,C’を通る垂直な補助線を平面図まで降ろします。

降ろした補助線と平面図の消失線が交わる位置A’,B’,C’が、床と壁の境目の線の基準となります。

 

[図4-2]

[図4-2]



 

あとは、この線を画面に対して水平垂直に巡らせていけば、同じ高さの床面をぐるりと描くことができます。

時々上の断面図の補助線と照らし合わせ、パースがずれていないか確認しましょう。

 

[図4-3]

[図4-3]



 

最後に補助線をけして完成です。

 

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STEP5床の高さに差がある場合

ここまでのやり方は同じ高さの床面について解説してきました。

実際の建築には机や、土間、スキップフロアなど、床の高さに差があるのが普通です。

 

[図5-1]

[図5-1]



 

この場合も、やることは基本同じです。

  1. 断面図内の視点Sと床や机の高さ(点D,E,F)を結ぶ補助線を引く
  2. その補助線とガラス面の交点(D’,E’,F’)から垂直線を平面図まで下ろす
  3. 降ろした垂直線と平面図の消失線の交わる点を結ぶ

この手順を踏めば、床の高さの違いやテーブルなど高さの違う家具も配置することができるようになります。

 

[図5-2]

[図5-2]



 

 

まとめ

以上がある程度丁寧に建物の天井高を反映させた平面パースの作図方法です。

この方法ならば、天井高や机の高さを数値的に決定させながら作図することができます。

 

 

ところで、筆者が考える平面パースの魅力とは、

「作図の簡単さと伝えられる情報の量のバランス」

だと考えています。

 

模型写真や二点透視法のパース、あるいはBIMを活用したデジタルパースは美しく魅力ある風景を伝えられますが、作成に時間と手間がかかることが難点です。

 

手描きのスケッチでは、より短時間で作成できる上、その建物の総合的な雰囲気を伝えることは可能ですが、スケール感や部屋の縦横比と天井高の把握などが難しく、定量的な情報を伝えることができません。

 

一方で、平面図や断面図はより正確な情報を伝えることが可能ですが、曖昧さを許容せず、作図に厳密さが求められるため作成するのに時間がかかり、また奥行きが無いため空間の雰囲気を伝えるには書き手だけでなく読み手にも相応のリテラシーが求められます。

 

このように、建築を伝える手法はたくさんありますが、それぞれに一長一短の特性を持ち、状況に応じて各種表現手法を使い分けることが求められています。

 

 

そんななか、この平面パースは

・作図が短時間で済む

・厳密な平面寸法の情報を持つ

・内観外観の全体像を示せる

・奥行きのある絵のため、図面に不慣れな人でも見やすい

・エスキス段階のスケッチから提出するプレボのキービジュアルまでこなせる

 

と非常に小回りの効く便利な表現だと考えています。

 

 

 

今回の記事では、より正確に平面パースの奥行きを表現する方法を紹介しました。

そしてこの作図の考え方そのものを理解しておくことはパースを描く上で非常に重要だと考えています。

 

しかし、毎回平面パースを描くために、ここまで時間と手間と紙面を費やす必要があるのかは疑問があります。

 

ここまで画像を費やして述べてきたように、平面パースの奥行きを正確に表現するためには平面図の上に断面図がかけるだけの余白が必要となります。

補助線を大量に引くため、絵も汚れやすくなりますし、設計が複雑になればなるほどより多くの手間も時間も必要になります。

 

そこまでの手間を掛けるのであれば、いっそデジタルで建築をモデリングして画像として出力したほうがよっぽど楽かもしれません。

 

 

 

何より、前回の記事でも実験した通り、平面パースの奥行きはある程度自由度が高く、厳密な天井高を算出しなくてもそれっぽく見せることが可能なのです。

 

 

 

であるならば、平面パースの奥行きは好きに決めてしまったほうが費用対効果が高い、というのが筆者の結論です。

 

 

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